大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

徳島地方裁判所 昭和58(ヨ)114等 労働事件裁判例

主 文

一 被申請人は、左記の要領により、総評全国金属労働組合徳島地方本部光洋シカ

ゴローハイド支部の臨時組合大会の招集手続をせよ。

(1) 日時

本件仮処分決定後一四日以内における最後の日曜日に当たる日の午後一時

(2) 場所

徳島県板野郡<以下略>

藍住町町民会館

(3) 参加、出席できる組合員の範囲

申請人らを含む全国金属労働組合徳島地方本部光洋シカゴローハイド支部所属の

組合員

(4) 議題

右支部の役員の選出その他組合活動上緊急に審議決定を要するもの

二 訴訟費用は被申請人の負担とする。

理 由

一 申請人らの申立ての理由の要旨は、

1 申請人らは総評全国金属労働組合徳島地方本部光洋シカゴローハイド支部(以

下単にCR支部という。)の組合員であり、被申請人は昭和五五年九月右CR支部

の執行委員長に選出された者である。

2 被申請人らCR支部執行部は、組合役員選出等重要事項を議題とする昭和五七

年九月四日開催予定の支部定期大会を突如無期延期し、当時組合員の三分の二以上

に当たる約二〇〇名の連署による臨時大会の要求も事実上無視し、全組合員が正当

に権利行使ができる状態の下での支部大会開催を拒否し続けてきた。

3 そこで、全組合員二九六名中の過半数に当たる申請人ら一五三名は昭和五八年

六月八日、被申請人に対しCR支部組合規約第一三条(同条によれば、三分の一以

上の組合員の要求があるときは執行委員長は臨時大会を招集しなければならない旨

規定する。)に基づき、組合役員選出と組合活動上の緊急事項の審議を議案とする

臨時大会を一週間前に告示したうえ同年六月二一日までに招集開催するよう要求し

た。

しかし、被申請人は右要求をも無視し、現在に至るも大会開催の告示さえもして

いない。

4 なお、被申請人は全国金属労働組合徳島地方本部(以下単に徳島地本とい

う。)執行委員長との連名で、昭和五八年五月一九日付書面をもつて、申請人らを

含む組合員一九八名に対し、「事実上の分裂状態にあり、全国金属徳島地本光洋C

R支部の組合員として認知しない。」旨の通知をした。

右通知の内容は明らかでないが、仮にそれが申請人らの組合員資格を喪失せしめ

る趣旨のものとするならば、右処分は組合規約等にも何ら規定のない処分であつて

無効であり、申請人らは依然として、CR支部の組合員として組合規約第一三条に

より被申請人に対し大会招集請求権を有するものである。

5 そうして、被申請人は、多数の組合員の強い要求も無視し、既に任期も終了し

実質的にも組合員の信任も得ていないにもかかわらず、組合運営に当たつているも

のであつて、現在の状況を放置すれば申請人ら大多数の組合員の意思に反した組合

運営がなされ日々回復し難い重大な損害を被ることが明らかである。

というにある。

二 被申請人らの主張の要旨は、

1 申請人らは昭和五七年八月、光洋シカゴローハイド株式会社の意を受けて反組

合活動を目的として結成された「ほづみ同志会」に所属している。

2 CR支部執行部及び徳島地本は当初から「ほづみ同志会」に対し再三反組合活

動、分派活動を中止し、解散するように警告、命令を出したが、右同志会のメンバ

ーは一貫してビラ配布やオルグ活動を通じて分派活動を継続した。

3 そこで、徳島地本は昭和五七年九月一三日規約に基づき申請人らのうち二九名

を六か月間、一六名を三か月間組合員としての権利を停止する処分に付し猛省を促

したが、何ら反省することなく、ますます徳島地本、CR支部の組織系統とは別個

に分派的な活動を展開し、まさに「分裂状態」といわざるを得ない事態となつた。

4 このような経過の中で、全国金属労働組合中央本部も事実上の分離状態を認

め、CR支部及び「ほづみ同志会」はともに昭和五八年三月から五月にかけて、相

前後して「分離」を決議確認した。

5 そうして、右の決議を受けて徳島地本は同年五月一八日臨時大会を開催し、

「ほづみ同志会は事実上地本、支部から分裂した状態であり、組合員として認知し

ない。」旨の処分決定をした。右処分は徳島地本規約第四二条の統制処分であり、

申請人らを含むほづみ同志会の会員の行為は本来除名処分に値するものであるが、

「分離」案が提起されている現状にかんがみ、脱退勧告を伴う無期限の権利停止処

分に付したものである。

6 したがつて、申請人らは現に組合員としての権利を無期限に停止されているも

のであつて、被申請人に対し組合大会の招集請求権はなく、また申請人ら主張の保

全の必要性もない。

というにある。

三 当裁判所の判断

1 本件疎明資料によれば、申請の理由の要旨1ないし3記載の事実が認められ

る。

2 そこで、申請人らの組合大会招集請求権の有無について検討する。

本件疎明資料及び被申請人本人の審尋の結果によれば、徳島地本は、昭和五八年

五月一八日開催した第二回臨時大会において、申請人らを含むいわゆる「ほづみ同

志会」会員に対し、「事実上の分裂状態にあり、全国金属徳島地本光洋CR支部の

組合員として認知しない。」旨決定して通知し、更に同年六月三〇日開催の徳島地

本第三回臨時大会において、右決定中の「認知しない。」ことの意義について「認

知しないとは四二条の脱退勧告であり無期限の権利停止である。従つて、勧告に応

じず脱退せず支部にも復帰しない者は無期限の権利停止処分とする。」との追加決

議がなされたことが認められる。

ところで、労働組合の組合員に対する統制処分は、事柄の性質上一義的に明確か

つ組合規約に規定された処分に限定されたものでなければならない。

しかして、本件疎明資料によれば徳島地本規約第四二条には組合員が組合員とし

ての義務を怠つたときには執行委員会は大会または委員会の決議により「警告、譴

責、権利の制限、脱退勧告または除名」することができる旨規定していることが認

められるところ、前記徳島地本のなした「組合員として認知しない。」旨の処分は

字義的に右規定のいかなる種類にも該当しないことは明らかである。そうして、右

処分を右条項にいう「脱退勧告」を含む「無期限の権利停止」と読みとることも到

底できない。更に前記第四二条にいう「権利の制限」について同規約上特に定めが

ないところ、疎明資料によればその規約上、地方本部及びCR支部の規約に優先す

る効力を有する全国金属労働組合規約第六六条には組合員に対する統制処分として

「警告、譴責、権利の制限、脱退勧告または除名」の五種類を明記し、その細則第

一三条第三項には特に右規約第六六条の処分のうち「権利停止は組合規約第七条の

権利の全部もしくは一部を期間をきめて停止し、その理由を本人に通告すると共

に、これを全組合員に公示するもの。」と規定していることが認められ、右事実に

よれば、被申請人主張の無期限の権利停止処分なるものは規約上予定されていない

ものと認めざるを得ない。

そうすると、申請人らに対する「全国金属徳島地本光洋CR支部の組合員として

認知しない。」旨の前記決定は、統制処分として何ら効力のないものといわざるを

得ず、従つて申請人らはいずれもCR支部組合員としての権利行使を妨げられず、

同支部労働組合規約第一三条に規定する臨時大会招集請求権を有しているものとい

うべきである。

3 組合員らが規約所定の要件を満たしたうえ、招集権者に組合大会の招集を要求

したにもかかわらず、招集権者がこれを拒否した場合、民法第四一四条第二項但書

きを準用して招集権者に招集を命ずる本案又は仮処分の裁判を得てこれに基づき大

会を招集することができるものと解すべきところ、在籍組合員二九六名中CR支部

組合規約第一三条所定の組合員三分の一以上に当たる申請人らが被申請人に対し臨

時大会の招集を請求したことは前認定のとおりである。

なお、疎明資料によれば、被申請人は、昭和五八年九月一五日午後一時から、会

社食堂において、役員選出等を議題とする組合大会を招集し、公示したことが認め

られるけれども、被申請人の主張する申請人らに対する前記処分が撤回ないし取り

消されたと認めるに足りる疎明はなく、したがつて、申請人らが組合員として正当

にその権利を行使しうる大会招集であると認めることは困難である。

4 そして、申請人らが組合役員選出等を通じて自ら組合員としての意思を実現す

る機会を奪われ組合活動上回復し難い損害を被つていることは容易に推認すること

ができる。

よつて、申請人らの本件仮処分申請は理由があるから、保証をたてさせないでこ

れを認容することとし、申請費用の負担につき民訴法第八九条を適用して、主文の

とおり決定する。

(裁判官 上野利隆 田中観一郎 以呂免義雄)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!